ネットの入試への影響

ネットは情報の流通の形を変えてしまったのでいろんな影響が出ている。大学の入試なんかもそうだ。大学入試には結構多くの人間が関わる。この中で不心得者がいると簡単に不祥事が発生する。今年始めに研究する人生が閉鎖されてしまったが、これの原因となった情報漏洩、結構問題だと思うのだが。
もう一つ影響を受けているのが大学院入試である。かつては、大学院入試とは内部進学試験とほぼ同義だったので(研究室配属された4回生が院に進めるかどうかを決める試験という意味合いが強かった)、形式的には通常入試であるとはいえ実質的には通常の定期試験と同じような感覚で行われていたところが多いと思う。なので、選抜そのものは公正に行われてはいるが、結果発表が正式発表前に実質行われてしまうということがあった。たとえば私自身が15年前に受験した(今は亡き)工学研究科情報工学専攻では、筆記試験が全て終わった後に面接試験があるのだが、その時点までに実は採点が終わっており、面接の時の先生の表情で合格しているかどうか判ってしまう。これはむしろ、不合格の人間に恩恵が大きい。正式合格発表はその10日後くらいに行われるのだが、そこまで待たずとも就職や別の大学院受験といった身の振り方を決めるための動きを始められる。
ところが、このシステムが今は問題になっている。なぜなら、(内定状態とはいえ)合格したという学生が掲示板やblogでそのことを言い始めてしまうのだ。正式でない以上これは好ましくない。さらに、外部からの大学院受験生はこのようなシステムが判らないので正式発表まで自分の合格を知る由がなく、不公平になる。実際そういうクレームもあったと聞く。そこで今年から工学研究科では入試結果についてかなりきつい箝口令が布かれており、こういう内定を伝えるシステムが禁止された。
もちろん公平性も透明性も大事だから、これは仕方ないのかと思う。が、自分の指導している4回生が落ちている先生にとってはとても辛い。私は幸か不幸か、今年指導してる4回生は就職希望なので影響ないのだけど。そもそも指導教官が事前に自分の指導学生の合否を知っているという事態があるからこういうことが起きるのだが、しかしやはり選抜の趣旨からいっても、入試過程にはその専攻のほぼ全員の教員が関わらざるを得ず、不可避の事態だ。いい手はないものだろうか。