履修漏れ問題、一言だけ。

最近新聞を賑わしている履修漏れ問題。一応大学の側にいる人間としては、やっと表沙汰になってくれたなぁという気持ち。
ずっと薄々、けっこう広まっているのではないかという疑念を持っていたこの問題に直面させられたのは、今年が大学にとって新課程の学生を受け入れる最初の年で(俗に2006年問題といわれていた)その対応に迫られていたから。特に我々、大学の情報教育担当者にとっては教科「情報」の導入効果が気になるところ。そこでうちのセンターでは今年、新入生にアンケートをとった。その結果はDSMシンポジウムでもうすぐ公にするが、要するに新課程履修した学生のうち約25%が「情報A,B,Cとは別の教科を受けた」または「何も履修していない、覚えていない」と答えている(そのうち履修していないとしたのは約5%、覚えていないとするのが約2%)。別の教科の中には職業科の情報の授業もあったり、また学生自身が受けていた授業の科目名をちゃんと把握できていないこともあるかもしれないので一概には言えないが、無視できない割合の学生が教科「情報」を履修していない可能性がある、ということはわかっている。この結果は京大に限らずあちこちでささやかれたり、一部は公になったりしていて(いけなかったけど辰己先生ジョーシン06緊急特別企画は聞きたかった)、情報教育研究集会でも各大学の調査結果が発表されると思う。世間は世界史に注目してるが、受験とは関係ないがゆえに「情報」もかなりないがしろにされているという感じだ。
じゃあ大学入試で「情報」を採用しろよという話もあるが、大学の立場としては高校を出ている人間が高卒の資格として求められている知識は持っているというのは当然前提にしていて、その上で「出来」の差を選別したい項目について入試で調べている。高校を全く信用しない体制でやれといわれれば入試の体制は根本から変わり、その負担は大学にとっても受験生にとってもかなり増大するだろう。高校の責任でやるべきことをちゃんとやっていればそんなものは必要ないはず。こうなりゃ不幸なのは他でもない受験生だ。
まぁ個人的には、少なくとも工学系は英語数学と同じくらい情報B的内容が大学で必要なので、情報Bを意識した入試は課してもいい時期かなぁと思わなくもないんだけど(変に受験テクに走られないような工夫はいるが)。ちなみに実施するとどうなるかというのは東京農工大が参考になる。どんな入試が行われたかは試行問題をみていただければいいだろう
参考:
ジョーシン06を終えて(Okumura's Blog)
必修教科を真面目にやる先生を支援しよう(辰己丈夫の研究雑報)
必修教科「情報」を教えていない学校がどれくらいあるか?(辰己丈夫の研究雑報)
ちょっと違うけど
東大生にも蔓延!履修漏れ問題 「ゆとり教育」が国を滅ぼす(立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」)
これも。2006年問題が直結しているとまでは言わないけど、最近確かに講義が難しくなった。なんというか、知識欲を感じる学生がどんどん減っているように思う。講義で工夫しようと思うがそれにも限界がある。