匿名性発生の瞬間

展望台から下に降りてふらふらしてると土産屋のおっちゃんに呼び止められる。どうやらこんな観光スポットでネクタイ背広姿でカメラ下げてるのが珍しかったらしい。「にいちゃん取材か?」「はぁ、まぁちょっと違うんですけど」「差し入れやろか?」なんと売り物の佃煮とかちりめんとか、惜しげもなくヒョイヒョイと適当に詰めて気前良く差し出してくれた。ありがたく頂くが、それだけでも悪いのでソフトクリームと、土産をいくつか買う。
ソフトを食いつつ立ち話。洲本市で講演しにきたという事情を話すと、「そういや役場でこないだえらい恥かいてなぁ」とこんな話を披露してくれた。この辺は最近まで南淡町だったのだが、4月の合併で南あわじ市になった。合併前までは役場の人もみな知り合いで何をするにも本人確認なんて要らなかったそうな。それが合併後役場に行ったら、知らない人ばかり。どんな手続きの話かは聞きそびれたが本人確認が必要だったらしい。窓口の人が困って役場内に響き渡る大声で「ダレかー!この人知らんかー??知ってる人おるかーーー!?」と言い出したそうな。役場中の人の視線を集めたそうで・・・「えらい恥やったわ」そりゃ災難でしたなぁおっちゃん(^^;
まぁこれは笑い話で済む話なんだけど、小難しく言えば都市化の瞬間におっちゃんが立ち会ったということになるんだろうか。人は本来社会的な生き物なので他人との関わりなしには生きられないが、ある程度以上の人数が集まると必ず人間関係のストレスが産まれる。そこで人間関係を疎に保ったまま社会を保つ仕組みが必要になる。そこでプライバシーの概念が産まれ、それを保つための匿名性が求められる。貨幣も、第三者による本人確認も、人と人とを疎に保つための仕組み。
ネットの匿名性もきっとその延長線で考えないといけないんだと思うんだけど、ネットが社会インフラになった今、もう一歩進んだ議論がいると思う。先日の白浜シンポ、そこにたどり着けなかったのが個人的には残念。近々文章にしよう。
それはともかく、おっちゃん、都市にようこそ。